アナウンサーも口にする
「重複表現」の落とし穴
「一番最初」「後で後悔する」「新年明けましておめでとうございます」。どれも文字にすると、同じ意味を重ねる“重複表現”であることは一目瞭然だが、無意識に使ってはいないだろうか。『常識以前の日本語』(ワンツーマガジン社)の著書もある本郷さんによれば、「訓練を受けたはずのアナウンサーにさえも、重複表現を使う人がいる」という。
なぜ、これほど重複表現が使われているのか。「言葉を重ねて大袈裟に表現すれば、意味を強調できます。現代では強い表現が好まれるため、間違った日本語の聞き取りづらさより、言葉を印象付けることのほうが重要視され、重複表現を定着させてしまったのでしょう」と本郷さんは言う。
冒頭の「一番最初」や、「断トツの1位」などのトップを示す重複表現は、その最たるものだろう。“最初”に一番も二番もあるはずはないが、“一番”を付けたほうが強調できると考えるのは人の常。聞く側にもその意図が理解できるため、たとえビジネスシーンであっても、見過ごされているのだという。
一方、「製造メーカー」や「チゲ鍋」のように、同じような意味の日本語と外来語を重ねた言葉は、意味を分かりやすくするために生まれた重複表現だという。「チゲ鍋は、“鍋”が付いているから鍋料理だと分かります。外来語、日本語、どちらか一方だけでは分かりにくい言葉は、あえて同義語を重ねることで分かりやすくしたのでしょう」と、本郷さんは言う。
実際、ここに挙げた重複表現を見て、過去の失言に顔を赤らめている人も多いのでは。ビジネスシーンでも、うっかり口にしてしまうから怖い。本郷さんは「特に、後に残るメールや手紙では気を付けたほうがいい」と言う。これを機に自分の言葉の癖を見直したい。
× 断トツの1位
職場でも「断トツの1位でした!」と報告するのはよくあること。だが“断トツ”は“断然トップ”の略語で1位を指す。つい力が入り、強調したくなるが、冷静に判断を。
ほかにも……× まず初めに
× 一番最初/一番最後
× 今現在
× すべて一任する
「一任」とはすべてを任せること。「一任」で十分に意味は伝わる。このように、1つの単語で意味は伝わるのに、別の言葉を加えて重複させてしまう例も多い。「収入が入る」「後で後悔する」などは、同じ漢字が含まれているので、重複表現だと気付きやすいはず。
ほかにも……× 注目を集める
× 収入が入る
× 被害をこうむる
× 後で後悔する
× 過半数を超える
× お中元のギフト
「お中元」は、世話になった人への夏の贈り物。ギフトは贈り物と同義語だから、これも重複表現。また、「元旦」は元日の朝のことなので、「元旦の朝」は重複表現である。
ほかにも……× 新年明けましておめでとう
× 元旦の朝
× クリスマスイブの夜
× 製造メーカー
メーカーと、ものを製造する会社=製造業者は同義語。日本語と外来語の重複表現は定着しているが、ビジネスシーンでは気を付けたい。
ほかにも……× 排気ガス
× IT技術
× チゲ鍋